家づくりにおける換気システム導入のポイント

現在の建築基準法ではシックハウス症候群対策のため「住宅等の居室」に対し「1時間に0.5回以上の換気回数」が義務付けられています。そのため、家づくりにおいて「24時間換気システム」の設置は必須と言っても良いでしょう。様々な種類が存在する住宅用の換気システムは、例えば「第一種換気か第三種換気か」「熱交換機能はついているか」など、システムを選択する際の基準はひとつではありません。そこで換気システムの種類や選び方のヒントについてお話しましょう。一度建てたらやり直しのきかない家づくりですから、事前の検討に役立ててください。

注文住宅の設計で重視すべき換気システムの特徴

注文住宅を建てる際の設計には間取りなどと合わせて24時間換気システムの構築も含まれます。このとき忘れてはならないのが「メンテナンス性」です。屋外から新しい空気を給気し、室内の汚れた空気を排気する換気システムはフィルター交換や清掃など定期的なメンテナンスが必要不可欠です。もし全くメンテナンスをせずに稼働し続けたらどうなるのでしょうか。フィルターにホコリが溜まり、室内に取り入れる空気自体が汚染されてしまうかもしれません。また、モーターなどの不具合に気づかず使い続けてしまい故障の原因になるかもしれません。換気不十分な状態が続けば、有害化学物質の滞留、結露やカビの発生などを招き健康被害のリスクが生じかねません。快適な住環境を維持するには、換気性能の他に、次の二つの点が重要となります。

(1)将来に渡って清掃やパーツ交換などが可能な設計となっているか
(2)ぞれぞれのメンテナンスは後々まで負担にならないか

例えば、「ダクトタイプ」「ダクトレスタイプ」という違いで換気システムのメンテナンス性を考えてみましょう。ダクトタイプは確実に給排気量を確保できるというメリットを持ちますが、空気の通り道であるダクトの清掃には定期的に専門業者に依頼する必要があります。対して、ダクトレスタイプはダクト配管が無いために設計がしやすく清掃もしやすいシステムです。ただし、各部屋にユニットの設置が必要となり、フィルター交換等はそれぞれのユニットごとに発生します。自分でメンテナンスが可能な反面、手間がかかってしまいます。取り付けられるタイプは設置のタイミングや建物の構造にもよりますが、どちらを設置するにしてもメンテナンスを怠らないように心がけましょう。

※どちらも給気は壁に設置する給気口から、排気によって生じる圧力差で自然に給気します。

住宅性能に左右される換気システム選び~新築時に気を付けておきたい気密性~

換気システムは、高断熱高気密の住宅でより効果を発揮します。特に熱交換式の第一種換気システムは特にその傾向が顕著な換気システムです。新築で家を建てるなら、高断熱高気密の家を建築できるように発注先の選定や設計の段階から考慮することをおすすめします。
その際、特に気を付けておきたいのは「気密性」です。断熱性については、第5回 気になる熱交換換気システムの「消費電力の熱交換換気システムのメリットを発揮するには?」でもふれましたが、窓をアルミサッシから樹脂サッシに取り替えることで大きく改善をはかれます。つまり家が建ってからでも対応が可能といえます。

一方、気密性は家を建てた後では簡単に対応ができません。気密とは、簡単に言えば家の隙間の事です。気密性(気密性能)とは空気がその隙間から出入りしない性質と考えてください。気密性の低い住宅では、(家の隙間から)室内外を出入りする空気量が多く、空気と一緒に熱も入れ替わります。熱交換システム以外のところで大きな熱のロスが発生している状態です。これでは、熱交換システムの効果を引き出すことができません。
気密は、建材や、建材と建材の接合部のふさぎ方が大きくかかわってきます。気密性は建材選びと施工の技術に関係しているので、家が建ってからでは改善することが難しいのです。

新築時に熱交換式の第一種換気システムを導入されるなら、高断熱だけでなく高気密にも注目してみてください。

◆気密性を知るには?
気密性を表す数値としては、「隙間相当面積 C値」という値があり、これは、建物の延べ床面積1㎡あたりの隙間面積を表す値です。数値が小さいほど気密性が高いことになります。C値は「住宅の隙間の面積を延床面積で割った値」で算出します。例えば、延べ床面積100㎡の家で、C値が1.0cm2/m2の場合、建物全体の隙間を集めると100?(正方形10×10cm相当)あるという意味です。
C値は気密測定器という専用の機器を使って測定可能です。有料ですが、気密測定サービスを提供している会社に依頼することができます。

リフォームによる換気システムの入れ替え

リフォームによる換気システムの後付けでは、導入費用が最も大きな問題となります。例えば新築では最初から配管の取り回しを考慮した上で設計・施工することができるダクトタイプの換気システムも、すでに建築の終わっている住宅に導入するには現状の天井裏や壁内部のスペースを調査した上でダクトを通す作業が必要になります。ですから、同じ第一種換気システムであればダクトレスタイプの方が、費用や工事内容という点では現実的な選択肢となります。とは言え、各ユニットから集中コントローラーへの配線方法は考慮に入れる必要があるため、どこにユニットやコントローラーを取り付けるのかは施工を行う工務店さんとはきちんと相談しておくべきです。

ちなみに、2003年の建築基準法改正以前には換気システムに関する法律的な決まりはなかったため、当時に建てられた住宅では24時間換気システムが取り付けられていないどころか、住宅の作りが「高気密・高断熱」仕様ではないことも十分に考えられます。そうなると隙間が多く外からの風が入り込んで室内の気流が安定せず、計画的な換気が難しいと言わざるを得ません。築19年以上の住宅に新たに換気システムを加えたいとお考えなら、取り付ける換気システムの種類だけでなく、リフォーム工事の内容や換気システムを取り付けた後の換気効果についても事前に相談すると良いでしょう。

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