気になる熱交換換気システムの消費電力

熱交換換気システムは、換気はもちろんのこと温度を調整してくれる一石二鳥の換気システムといえますが、実際に設置するとなると電力の消費量が気になるところです。
熱交換換気システムの消費電力は「熱交換」機能の分、熱交換型でない換気システムに比べると当然のことながら電力の消費量は大きくなります。しかしお住まいの環境によって、その「熱交換機能」の効果が大きく発揮されて、冷暖房費にかかる負担を減らし、結果的に消費電力を抑えることができます。特に寒冷地では、熱交換換気システムの効果を引き出しやすくなります。

熱交換換気システムと屋内外の気温

「熱交換換気システム」は、給排気口内に内蔵された熱交換素子(エレメント)を媒介して、取り込んだ空気や排出する空気から熱の回収をしたり、熱を付与したりするシステムです。例えば冬場は、室内の温められた空気が排気口を通る際に熱を回収し、エレメントに蓄熱します。そして冷たい外気を取り込む際に、貯めていた熱を与えて温めてから室内へ送ります。夏場は逆に、室内の冷やされた空気を排出する時にエレメントを冷却します。暑い外気を取り込む際に、エレメントが空気を冷やし温度を下げてから室内へと送り込みます。これにより外気を室温に近い温度で取り込むことができるようになるため、熱量のロスが減り冷暖房の効率を上げることが期待できます。ただし、冒頭にも書きましたが、住んでいるエリアによって効果が変わってきます。では、どのような条件下で熱交換換気システムの効果が発揮されるのか見ていきましょう。

図1:熱交換(回収)システムの仕組み

熱交換換気システムのメリットを発揮するには?

熱交換換気システムによる冷暖房の効率化は、お住いの地域によって影響を受けます。そもそも熱交換システムは、建物の気密性が高く、中と外で気温の差が激しく、かつ暖房を使用する期間と時間が長いほど効果を発揮します。

「冷暖房を使用する期間と時間」ではなく「暖房を使用する期間と時間」としている理由は、暖房に必要な熱量の方が冷房に使う熱量よりも多いからです(下グラフ参照)。

グラフ1:東京と札幌における 冷暖房に必要とされる熱量

※デグリデー(ディグリデー)とは
暖房や冷房のための電力使用量の目安にするためにつくられた気温の積算値。度日ともいう。日平均気温が,暖房の場合は基準温度(14℃)以下の日について,冷房の場合は基準温度(24℃)以上の日について,その差を 1年間積算したもの。それぞれ暖房ディグリーデー,冷房ディグリーデーという。(ブリタニカ国際大百科事典より)

そのため「冬=暖房を必要とする期間」がとても長く、全室全日暖房を行う北海道や東北地方の方が、熱交換システムの良さを引き出しやすい環境にあるのです。対して、関東地方以西の本州・四国・九州では冬場であっても暖房をリビングだけに留めたり、朝晩だけに留めたりと部分的・断続的暖房の住宅も多く、回収できる熱量自体が大きくはありません。また、冷暖房を使わない春季・秋季が長い地域では熱交換換気システムのメリットを生かせる余地が小さくなってしまいます。
さらに住宅の気密性や断熱性によっても、熱交換システムの効果は変わります。特に、冬場の暖気は窓から約58%が逃げると言われています(図2)

図2:新省エネルギー基準住宅における熱の出入り口と割合

そのため、窓に熱対策を何もしていない住宅よりも、窓に熱対策を施している住宅の方が冷暖房の効率が良くなるのです。

余談ですが、窓の熱対策はサッシの素材が大きく関係しています。普及している主なサッシの素材はアルミ製と樹脂製です。全国的に普及しているのはアルミ製のサッシですが、東北や北海道等のいわゆる寒冷地では樹脂サッシが多く取り入れられています。性能を比較すると、アルミは熱伝導率が高く冬場には室内の熱を容易に屋外へと放出してしまいます。逆に、夏は屋外の熱を侵入させてしまいます。一方、樹脂サッシは熱伝導率が低く室内外の熱を伝えにくくする素材です。よって、サッシを樹脂製にするだけで断熱性能が向上し冷暖房効果が十分に期待できます。寒冷地にお住まいで、すでにサッシが樹脂製という住宅でしたら、熱交換換気システムを設置することで電気代節約が期待できる可能性が高いといえるでしょう。

換気システムは空気の入れ替えだけでなく、室内の熱を維持するもの、外気の埃や汚染物質の侵入を防ぐものなど、様々な効果を備えたモデルが存在しています。そして、それぞれにランニングコストが異なります。単に「換気システムの電気代」だけをみるのではなく、換気システムに関わる総合的なコストを考慮した上で、導入モデルを決定することをおすすめします。

また、室内の熱を維持し冷暖房の効率化を図るには、換気システムと併せて複層ガラス窓や樹脂サッシ窓などの採用を検討すると良いでしょう。換気システムとの相乗効果を高め、住宅の気密性・断熱性を向上させることが消費電力の抑制につながり、ランニングコストを下げることにつながります。

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